お正月のNHKスペシャルで放送されていた『NEXT WORLD 私たちの未来』をみた。
とうとう人類は若返りの秘薬を発見したそうだ。
なんだかこんな本があったなあーと本棚を探して読んだのが『ドリアン・グレイの肖像』(オスカーワイルド)

オスカーワイルド(1854-1900)は19世紀のアイルランド出身の作家。
メルヘン『幸福な王子』も書いていて(私は童話という言葉がしっくりこないのでメルヘンといいます。)
色々な騒動を起こしたけれど小説の時代と言われる19世紀、世界中に影響を及ぼした作家です。
オスカーワイルドに影響された日本の文豪たちも多い。
森鴎外、夏目漱石、芥川龍之介、谷崎潤一郎などなど・・・・
この本の中には様々なオスカーの知識が入っていて、それだけ取り出しても有益です。
作品の内容を一言で言うと
美貌の青年ドリアンが画家バジルのモデルとなり1枚の肖像画が描かれる。
青年ドリアンは永久の若さと引き換えに、絵が年を取っていくなら魂も投げ出すと言う。
その後徐々に自分の悪行や悪意が肖像画の表情に
刻々とあらわれてドリアン自身に恐怖として襲いかかってくるという内容です。
魂と肉体という問題でもありますね。
素直な人間が一つの観念からやがて欲望のまま愚行礼讃の哲学となって「快楽」となってしまう。
人間が悪に染まっていく心の様子や、誰にも見せられなくなってしまう
自分自身の心が映し出される一枚の絵。(これは恐怖ですね!)
オスカーワイルドの手に汗握る世界が広がる小説です。
「魂にも獣性があり、肉体にも霊的な瞬間がある。感覚も浄化されうるし、知性が頽廃することもある。
どこに肉体的衝動がおわり、どこに精神的衝動がはじまるかを、誰が指摘しうるだろう」(p119) と
オスカーワイルドは文中でこの時代の心理学者を批判しています。
つまりオスカーが言う魂と肉体の関係は切り離せないと言っています。
これから未来、私たち人間は秘薬で若返えることが可能になって
ますます長生きできるのであれば、
さらにどう生きるのかも私たちに突きつけられる問題でしょう。
病気が予防できて、また治療も簡単になって喜ばしいけれど
なんだかまた別の難しい問題がでてきそうな予感・・・・
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